スマホを構えて撮影する人たちを見ていると、色々な形が現れる。
見ているだけで楽しくなって、クロッキーの練習にもってこいだ。

ページ下部にポーズ集のリンクを貼ったので見てほしい。

スマホを見るとき、人にはそれぞれ決まった「型」がある

たとえば、立っているときは、左右どちらかに体重をかけ、片手でスマホを操る。
スタイリッシュで都会の交差点が似合うシルエットだ。
椅子に座り足を組み、前かがみにスマホを見ている。
背中が丸くなって、猫がスマホを見ているようで、可愛いと思ってしまう。


それぞれの「型」を、ちょっと眺めてみたい。


口は集中の証し

写真を撮るとき、人は一段と真剣になる。
顔を上げ、スマホを真正面に構え、被写体をフレームに収めようと集中する。
目を見開き、照準を合わせ、シャッターをタッチ。何度も連打する人もいる。
そんなに撮るのかと思えば、ただの乾燥で画面が反応しづらいだけだったりする。

中腰から膝を曲げ、スクワットを途中で止めたポーズで撮る人も見かける。
見る側もつい力が入る。「ご苦労さまです」と声をかけたくなる。

子どもを撮るときは、無理な体勢でも気にならないらしい。
口を開けたままシャッターを切っている人もいる。集中すると開くのか?
いや、口がカメラになっているらしい。
イメージを描きながら撮ると、その通りに写るのだとか。
プロのように料理を撮ることもできる。すごい時代だ。

昔は「目がカメラになれば」と思っていた。
まばたき一つでシャッターが切れたら便利だと。
まさか口がカメラになるとは思わなかった。


姿勢の個性

QRコードを読み取るときも、姿勢に個性が出る。

脇を締め、背筋を伸ばし、スマホを顔の前でまっすぐ構える。
写真撮影と似たような姿勢だが、緊張感はQRコードが勝るように見えた。

フレームにぴたりと収めるため、前後に動かしながら慎重に狙いを定める。
まるで商品撮影のプロだ。目つきも真剣そのもの。

やはり口が開く。だが、口カメラに読み取る機能はついていない。
それでも体がねじれていても、スマホだけはまっすぐ。
「私はどうなってもいいから、せめてあなた(スマホ)だけは、姿勢よく……」
親心だろう、羨ましいスマホだ。
愛されているに違いない、私もスマホになりたい。

普段がに股の人も、このときだけは脚を閉じ、背筋を正し、スマホを前に構える。
そして一歩前へ、後ろへ……スマホではなく、自ら動くのだ。
社交ダンスのような動きだ。見ていて楽しいのは、スマホを動かすより体を動かす人。そして、読み取りが終われば、がに股に戻る。

中には、QRコードを撮り終えても姿勢を崩さず、そのまま歩き出す人もいる。
暗号の解読でもして興奮しているに違いない。
落とし穴があれば、まんまと落ちるだろう、見ていてハラハラする。
スマホ優先で歩かれると、こちらが避けることになる。
避けた拍子に、私まで穴に落ちたらどうするんだ。


実は知っている、でもまっすぐ

なぜ、あれほどまでに「フレームに収める」ことにこだわるのか。
私は知っている。多少ずれていても、QRコードは読み取れると。
でも、ついまっすぐに撮ってしまう。

逆立ち、股の間、寝転び、あらゆる体勢で撮影に挑んでみた。
スマホを垂直に保ち、タッチでピントを合わせる。

「あんな体勢じゃなくても……」と思うだろう。

それが私である。

知らずにやっていて「斜めでもいけるよ」と指摘され、赤面するよりはマシだ。
だから私は、笑って答える。

「うん、知ってる。知ってて、やってる」

「じゃあ、なんでそんな窮屈な体勢で撮ってるの?」

「こういう人がいて、面白かったから真似してるだけだよ」

もしかしたら、その日を境に友達関係が終わる恐れがある。
変なやつだ、おかしいやつだと思われるに違いない。
でも、それも含めて私なのだ。許してほしい。


今は、ただ見ているだけ

だから私は、QRコードを撮るのをやめた。
スマホを構えた瞬間、場の空気が固まる気がして、なんとなく遠慮するようになった。
友達も失いたくない。

代わりに、今は撮っている人たちを見ることにした。

逆立ち、仰向け、うつ伏せ、ブリッジなど、さまざまな「型」がある。
流派なのだろうか。

私はそういう訓練を受けていないから、ただ見て、真似して、憧れている。
たぶん、私のやっていることは間違っていたのだ、素人の悪さが出てしまった。
でも、もういい、終わったことだし、今はこうしているのがちょうどいい。
そうだ、せめて心だけは、まっすぐに整えようか。

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